社員が増えると、人事・労務担当者への問い合わせも増えていきます。
「この場合、休暇は使えますか」
「残業の申請はどうすればよいですか」
「この手当は自分も対象になりますか」
「休職できる期間は、どこに書いてありますか」
一件ずつ回答しているうちに、本来進めるはずだった給与計算や手続きが後回しになる。
さらに、すぐに回答できない質問が届くと、過去の資料を探し、上司へ確認し、就業規則を読み直さなければならない。
このような状態が続いている場合、問い合わせの多さだけが問題なのではありません。
会社のルールや判断基準が、社員にも担当者にも分かる状態になっていない可能性があります。
問い合わせが増えるのには理由があります
社員から同じような問い合わせが繰り返されると、
「社員が自分で調べてくれない」
「前にも説明したのに」
と感じることがあります。
しかし、社員が確認できる場所に必要な情報がなかったり、
書いてある内容と実際の運用が違ったりすれば、問い合わせを減らすことはできません。
たとえば、
就業規則がどこにあるか知られていない
規則を読んでも申請方法が分からない
社内ルールが口頭でしか伝えられていない
管理職によって説明が異なる
例外対応が積み重なっている
制度を変更したのに古い資料が残っている
といった状態です。
問い合わせは、社員側の理解不足だけで発生するものではありません。
会社のルールや業務の流れが分かりにくいことを知らせるサインでもあります。
回答に困るのは、
担当者の知識だけが原因ではありません
担当者が問い合わせへの回答に困ると、知識や経験が足りないことが原因だと考えられがちです。
しかし、会社としての判断が決まっていなければ、経験のある担当者でも回答できません。
たとえば、就業規則に制度の概要は書かれていても、
誰が申請を受け付けるのか
どの書類を提出してもらうのか
例外を認める場合、誰が判断するのか
給与や勤怠にどのように反映するのか
本人にどこまで説明するのか
が決まっていないことがあります。
この状態で担当者に回答を任せると、その人の経験や解釈によって対応が変わります。
担当者が変われば、以前とは異なる説明をしてしまう可能性もあります。
問い合わせが増えたときに
確認したい4つのこと
1.同じ質問が繰り返されていないか
問い合わせ内容を記録し、似た質問を分けてみます。
同じ質問が繰り返されている場合は、個別に回答を続けるより、案内資料や申請方法を見直したほうが効果的です。
2.社員が自分で確認できる状態か
就業規則、各種申請書、社内ルールなどが、社員にとって確認しやすい場所にあるかを確認します。
ただ保管されているだけではなく、必要なときに見つけられることが重要です。
3.会社としての判断者が決まっているか
担当者が回答できる範囲と、管理職や経営者が判断する範囲を分けます。
会社として判断すべきことまで担当者に任せると、回答の遅れや対応のばらつきにつながります。
4.規程と実際の運用が一致しているか
就業規則には書かれているものの、実際には別の対応をしていることがあります。
過去の対応だけを基準に回答していると、社員から根拠を聞かれたときに説明できません。
現在の運用が規程や社内資料と一致しているかを確認する必要があります。
回答の違いが、
社員の不信感につながります
問い合わせをした社員が最も不安に感じるのは、質問する相手によって回答が変わることです。
人事担当者からは「できない」と言われたのに、上司からは「問題ない」と言われる。
以前は認められたのに、今回は認められない。
その理由を説明できなければ、社員は会社の対応が不公平だと感じます。
最初は小さな問い合わせでも、説明や対応の違いが重なると、会社への不信感につながります。
そして、退職時や別の問題が起きたときに、過去の対応も含めて労務トラブルへ発展することがあります。
トラブルを防ぐためには、
担当者の回答力だけに頼るのではなく、会社として同じ説明ができる状態をつくることが必要です。
問い合わせは、
仕組みを見直す材料になります
問い合わせを減らすことだけを目的にすると、よくある質問をまとめて終わってしまうことがあります。
しかし、本当に確認したいのは、
なぜ、その質問が繰り返されているのか
という点です。
ルールがないのか。
ルールはあるものの、社員に伝わっていないのか。
実際の運用と就業規則が違っているのか。
判断できる人が限られているのか。
問い合わせの内容を整理すると、会社の労務管理で曖昧になっている部分が見えてきます。
社員からの問い合わせが急増したときは、
一件ずつ回答するだけでなく、ルール、案内方法、判断者、業務の流れを見直すタイミングです。
当事務所では、就業規則の内容だけでなく、
社員への案内、社内の判断基準、問い合わせ対応の役割分担まで含めた労務管理の整理を支援しています。
回答に迷う問い合わせが増えている、担当者によって対応が変わっている企業は、
労務基盤整備のページをご覧ください。

